こくしかん人図鑑 先生編
国士舘で見かける先生や友達は実は別の顔を持っていた! ココでは意外な素 顔を持つこくしかん人を紹介します。新たな発見が新しい出会いを生むかも。
vol.22 中村 一夫教授<文学部文学科日本文学・文化専攻>
好きが高じて研究対象にまでしてしまった純粋な思い——
熱狂に身を任せながらも客観的視点は忘れない。
22号掲載 2011年12月15日発行
※掲載情報は本誌発行時のものです。
趣味はアイドルで、研究対象の一つがアイドルの唄う歌詞。オタクほどのめり込まず、研究者らしい透徹した眼差しを忘れないものの、 アイドルを語る時は口元がついほころんでしまう。中村先生を10秒で語るなら、これで十分だろう。
アイドルに興味を持ったのは小学生の頃。伝説のアイドル、山口百恵にノックアウトされた。ピンクレディ、松田聖子を経て、80年代前半に誕生したセイントフォーは、 「歴代アイドルの中でも別格」というほどのめり込んだ。「若かりし頃に一番燃えたのがセイントフォー。握手会に行ったりもしましたね」。 しかし大学院進学以降、セイントフォーが立ち消え状態になると、アイドルからは遠のいてしまう。時まさに、セイントフォーのライバルである少女隊が絶頂期を迎え、 秋元康が仕掛けるおニャン子クラブが世に出る頃のことだ。
しかし、古文を中心に日本語の研究に没頭していたおよそ10年前、当時売り出し中のPerfumeと巡り合ったことがきっかけで、再びアイドル好きの血が騒ぎはじめる。 それは、先生の中でアイドルが、研究対象になった瞬間でもあった。「歌謡曲の歌詞を自分の研究領域から見ると、時代が投影されていてすごく面白いんです。アイドルの唄う恋愛ソングを例に 挙げると、昭和の頃は『あなた』と『わたし』だったのが、90年代半ばになると『キミ』と『ボク』に変わる。歌詞が作り上げる世界観が、大人の男女の間柄からカジュアルな恋人同士に変化した、 と捉えることができるんです」。そういった言葉一つから、アイドルがどういう意図で作られているか、そのイメージ戦略まで読み解ける、という。 ただのアイドル好きや芸能評論家とは異なる、趣味を仕事にした人の洞察は鋭い。
よくよく話を聞くと、そのこだわりも半端ではない。唄い踊るパフォーマンスこそがアイドルの命と考えている。 だから“年甲斐もなく”ライブに出かけていく。CDを聴くくらいならライブ動画を観る。テレビで見かけるひな壇に座っている彼女たちには、まったく興味がない。 「日本ではイロ物扱いされてますが、世界的にはクールジャパンの象徴と認められている。その面白さは、やはりライブに参加してこそ味わえるものなんです」。 ライブに陶酔し、一方では研究対象として客観視する。冷静と情熱の両極を自在に行き来するバランス感覚こそが、先生の“年甲斐”なのだ。
中村 一夫 NAKAMURA KAZUO
1961年生まれ。大阪府出身。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。専門分野は日本語学(平安・鎌倉時代)。生のアイドルの言葉を拾い上げるため、
研究の傍らではなく研究の“ため”にライブに出かける、という中村先生。先生のアイドル好きは学生にも有名で、グッズなどをプレゼントされるらしい。
大阪で待っている家族のために、月に数度新幹線で行き来する。
