ウゴパン連載企画

こくしかん人図鑑 学生編

なんだかスゴイことをしちゃっている国士舘の在学生を紹介する連載企画。ひたむきに夢を追いかける彼らの肉声を毎号更新!

vol.22 千波 丈二さん <政経学部 2年>

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カラカラに干からびた体から汗を絞り出す——
味わったことのない苦しみの果てに立つ栄光のリング。

22号掲載 2011年12月15日発行
※掲載情報は本誌発行時のものです。

 トレーナーのほかに誰もいないジム。リングに上がった千波くんが、ラテンポップスのリズムに身を任せシャドーボクシングをはじめる。 ガッチリした上半身とは対照的に極限まで絞られたふくらはぎ。これぞまさにボクサー体型だ。「ボクシングをはじめた理由ですか? 言っていいのかな……実は殴るのが好きだったんです。 小学校の頃はよくケンカしてましたね」。折しも亀田興毅の快進撃を受けボクシングブームに沸いていた5年前、中3のことだ。

 だからといって確たる目標があるわけでもなく、「なんとなくはじめた」のが本音。わけもわからずジムの門を叩き、先輩たちのシャドーボクシングを見た時、 この人たちには絶対勝てない、と思った。ところが周りからもてはやされ、あっさりプロデビューを決意する。ここまでの話を聞くと、ケンカ自慢が腕っ節を試したくてボクシングをはじめただけ、 のようにも見えるが、千波くんの根性がすわっていたのはここから。プロテストに一度は失敗するも再チャレンジで見事合格。さらに昨年2回戦で敗退した新人王戦に今年も挑戦し、11月3日、 トーメント決勝戦で勝利。東日本新人王として12月18日の全日本新人王決定戦にコマを進めている。

 ボクシングは生半可な気持ちでは続かない。リングでの戦い以上に厳しい“減量苦”があるからだ。規定の体重を1グラムでもオーバーすると、 それまでの努力がすべて無に帰してしまう。「去年の5月下旬、試合前の計量で200グラムオーバーしてたんです。普通ならガムを噛んで唾を吐いていれば落ちるウエイトだけど、 その時は体に水分がないから落ちなくて。サウナスーツを着て周りにストーブを置いて30分縄跳びして、ようやく落としました」。世間がTシャツ姿の時期に、ストーブに囲まれ出ない汗を必死に出す。 減量中は口の中が乾ききってしまい、寝てもすぐ目が覚めてしまう。学校では周りの友達を尻目に飲まず食わずを貫く。こんな苦しみは味わったことがない、というのも無理はない。

 それでも千波くんはボクシングが好きだという。そして何より、やってよかったと思っている。「人見知りが激しかったのに、人前に出ても緊張しなくなった。 ご飯のありがたみが身にしみたのも、ボクシングをやったからわかったことです」。飢えを知らない時代に、ご飯のありがたみを口にできる。想像を絶する苦しみに耐えるのは夢のため。 しかし、その苦しみが人間を大きく成長させるのだ。

千波 丈二 SENBA JOJI
1991年生まれ。私立中央学院大学中央高校出身。2011年“全日本新人王決定戦”進出。憧れのボクサーは長谷川穂積。トレーナーの「ボクシングは基礎が半分以上」の言葉を信じ、 毎日1時間、10km以上のロードワークは欠かさない。ボクサー千波丈二を生むきっかけとなった亀田興毅の、スパーリングパートナーも務める。全日本新人王の先に世界チャンピオンを見据える20歳。